100年後の学生に薦める映画 2112本

未来の皆さんに価値ある2112本の紹介を目指します。100年後に現在の映画ビジネスは無くなっているという前提。

『星をかった日』100年後の学生に紹介する映画 No.0712

2,112年の学生に映画を2,112本紹介致します、という設定のブログ

MOVIE No.0712星をかった日

2006 日本

ジブリの森の映画 星をかった日 パンフレット

 

[FOR A.D.2112 未来の学生に向けたレビュー]

星をかった日』は、筆者がもう二度と観る機会はないかもしれない映画です。何故なら、三鷹の森ジブリ美術館の土星座という小さな映画館でしか鑑賞できない作品の内の1本であるからです。2012年現在、その場所に訪れると、9本に及ぶ作品のいずれかが鑑賞できるようになっています。上映タイトルが切り替わるのは約1ヶ月おき。中々地の利がない限り、同作品を鑑賞する機会はないでしょうし、折角同地を訪れるのであれば別の作品も鑑賞したくなるというもの。DVDやテレビの放送で、過去作が何度も観れる世の中において、大変特殊な一期一会の映画となっています。

100年後の未来において、本作がどのように鑑賞できるようになっているのか判りません。もしかしたら、パブリックドメインの保護期限が影響によって、美術館以外の場所でも観られるようになっているのかもしれません。しかし何にせよ、私はもうこの作品を観られる可能性は低い。もし、本作が家庭で気軽に鑑賞できるよう「解放」されたとすれば、それは本作を制作するスタジオジブリの大転換機が訪れているときと言えるでしょう。大変魅力的な美術館。作品も含めて大切に運営してほしいものです。私自身は、好きな作品をビデオであれば擦切れる程観て楽しむタイプであり、何度も観れないのは残念ですが、だからこそ心に焼き付くものがあります。

作品の内容についても語りましょう。監督は別項で何度も紹介している、アニメーション界史上最大の巨匠・宮崎駿監督。イバラードという空想の世界を描いてきた井上直久氏の原作を基に本作を作り上げました。

ここからより具体的になるので、詳細を知りたくない人は読み飛ばしてください。物語は、カブの代わりに成長する星の種を手に入れた少年の物語。時間局に生き方を指導監視される世界に行き詰まった少年は、ふしぎな女性ニーニャにかくまわれ生活していた。そんな中で入れた星の種を育てていく。結果として、星の旅立ちが、少年自身の成長へと繋がっていきます。監督は男の子が主人公、井上氏は女の子が主人公であるべきと考えていたようですが、結果として本作は、前者の映画となりましたが、これは正解だったのではないでしょうか。

星を育てる物語だと、筆者は真っ先に、漫画家、藤子・F・藤雄先生の『創世日記』若しくは『ドラえもん のび太と創世日記』を思い浮かべます。この2作と比べて『星をかった日』が特徴的なのは、星を育てる場面の健康的な面白さです。家庭菜園のように、ダンゴムシが紛れた土を堀り、霧吹きで水をやって雲ができる。監督の他作にも感じ取られる、農耕的な肌触りを忘れずに生きるべきという精神が、尺が短い分、濃縮されて詰まっている。実に気持ちよい。

星は60年サイクルの周期に入り、主人公が星と出会えるのも60年後。主人公は決して完全に成長したわけではない。自分はともかく、ニーニャさんはこの星にはもう会えないのではないか。自然とそんな台詞が出てくる、心細さ。そんな少年に、ニーニャはとある事実と共にやさしい言葉を投げかける。ニーニャの口癖のような台詞に合わせていうならば、なんと「すてき」な作品か。先に筆者は本作をもう観れないかもしれないと書きましたが、できれば60年後にまた観たい。

劇場で笑いがあったのは、『千と千尋の神隠し』の頭(かしら)というキャラクターが登場したシーン。世界はいい加減に、楽しく繋がっている。

本作は決して大必見の映画ではありませんが、本作が観られている未来と観られていない未来であれば、私は是非とも前者にしたい。100年後の皆さんも、興味あれば鑑賞されたし。

☆ 

[DIARY 筆者の思い出]
知人にいただいたチケットでジブリ美術館へ。なんと素敵な体験。

 ☆ 

[RECOMMEND 現在と未来へのオススメ度]

FOR A.D.2,012 : ★★★

FOR A.D.2,112 : ★★★★★

 

星をかった日

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イバラード物語―ラピュタのある風景

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written by kiyasu   2012/7/1 第一稿

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