100年後の学生に薦める映画 2112本

未来の皆さんに価値ある2112本の紹介を目指します。100年後に現在の映画ビジネスは無くなっているという前提。

『巨神兵東京に現わる』100年後の学生に薦める映画 No.1912

2,112年の学生に映画を2,112本紹介致します、という設定のブログ

MOVIE No.1912 『巨神兵東京に現わる

2012 日本

[FOR A.D.2112 未来の学生に向けたレビュー]

本作『巨神兵東京に現わる』は、東京現代美術館で開催された『館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』という展示会にて公開された贅沢な一本です。感動とかそういうストーリー性は敢えて空洞化された作品ですが、新しさと過去への文脈が散り混じっており、中々興味深い。筆者がこの文章を記している時点で公開から一週間ほど経っている。筆者は何だかんだで7回鑑賞しており、この作品が未来の皆さんに伝えるパワーを持っているのか、2,112本の映画紹介に割り込ませる価値があるか、ずっと悩むに至っている。そもそも本展示会は、テレビや映画に使用された特撮の模型の保存が難しくなったことに対する危機感が発端となった展示会。エヴァンゲリオン監督の庵野秀明氏が館長。スタジオジブリが協力。この辺の物語はパンフレットに詳しく、未来の学生諸君もなんとかゲットして読んでいただきたいのであるが、未来に残したいという意思があるという点で、この2,112本の映画紹介と目的は一致する。結論としては、一旦、No.1912に入れて、様子を見たい次第である。いつかこの番号に辿り着いたときに再考したい。

さて、映画について語っておこう。この映画に登場するのは宮崎駿監督による漫画及び映画作品『風の谷のナウシカ』に登場する"巨神兵"。本展示会の相談先が、ナウシカ作品を扱うスタジオジブリだったこと、館長の庵野監督が当時巨神兵の作画を担当していたといった経緯が重なって生まれた企画である。真っ赤なスタジオジブリのロゴが出てくる時点で冗談にも思える楽しさを感じてしまうし、完成した作品がエヴァンゲリオンっぽく見えるということが、いろいろ考えさせられる。そういう文脈が、本作のポイントの1つであると言えましょう。

監督は樋口真嗣監督。ガメラ特技監督等で有名。GAINAX関連での繋がりも強い。火や破片がぶわっと舞い上がって回転するところやなどに、ガメラっぽさを感じます。今回監督による解説で面白かったのは、批判もありつつ、明らかに偽物と判る犬を映像に混ぜたところ。『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』のイノシシであり、馬なのだそうです。素晴らしい。

ドロリと解けるビル、巨神兵のビーム発射口など、印象的なシーンは多い。火薬を使わずにビルが崩れるシーンはこれまでにない手法を用いているとのことで、確かに出来も新鮮で良かったです。またいつかの機会に見たい。

また、未来の皆さんも同様のスタンスでいてほしいことは、特撮ファンは情報吸収及び分析に貪欲であることである。それで何か幸せが増えることはないのですが、頂点のない山登りを楽しむ感覚と思っていただければよいです。例えばこの映画。「映像中に出てくる建物の看板は実名の会社名が多いけど、2ちゃんねるという有名巨大ネット掲示板は、この世界では5ちゃんねるなとして描かれているのだな。携帯電話でSNSを眺めるシーンの書き込みの一部を読みと判る。セット撮影組と日常生活撮影組でスタンスが違ったのかな。そもそも、SNSのシーンの会話作ったの誰だろう?」「渋谷のシーンの電光掲示板で隅の方に流れているテレビ番組。後の住宅のテレビが映るシーンで、全く同じ場面が流れている。時系列になっていると考えれば、その番組の続きが流れた方がリアリティが増すと思うんだけど、手間隙の問題かな?」等々、気づいて、分析したくなってしまうのである。決して批判ではなく、楽しみの一行為だと理解してください。そもそもその作品を面白いと思わなければ、そんなに神経を研ぎすませて観ようとは思いません。今後の展開でDVDが発売されるなどすれば、コマ送りするなどして、さらなる気づきができるようになるのでしょう。

100年後の皆さんも、興味あれば鑑賞されたし。

☆ 

[DIARY 筆者の思い出]
東京現代美術館にて鑑賞。7回観た。

 ☆ 

[RECOMMEND 現在と未来へのオススメ度]

FOR A.D.2,012 : ★★★

FOR A.D.2,112 : ★★★

 

 

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written by kiyasu   2012/7/15 第一稿

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